僕はインドへ帰ってきた

元バックパッカーのインド・ムンバイ&チェンナイ駐在ブログ

Make In Indiaという掛け声はまやかしか。失望を与えたインド16/17年度予算と税制改革

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2/29にインドの16/17年度予算と税制改革が発表。
オフィスでも予算案の報道が流し続けられていたので、意識の高いスタッフはテレビを見続けていた。
 
昨年度の予算案が、開かれたインドをアピールするのに十分な雰囲気を醸し出していたにも関わらず、
本年度は選挙を意識してか農村重視を強く打ち出し、
(上院選挙を考えると、どうしても票を集めなければならないのだろうが、、、)
公的債務を増やすことなく、赤字財政を改善させる為、税制も産業界には非常に厳しいものとなった。
 
Make In Indiaという製造業強化ムーブメントを起こそうとしている中、全くの逆行である。
自動車産業を中心に進出が進んだ(もう少し言えば自動車以外の進出は鈍い)インドだが、
特に以下の点は、これから製造業を誘致するにあたり、マイナスの印象を強く与えかねないものだ。
(①の優遇にしても、90年代に中国が行った製造業税制優遇に比べれば微々たるもの)
 
①進出済の製造業への法人税優遇はなし
(新規進出の場合のみ、従来の30%から25%への減税は可)
②自動車・バイクへインフラ税を賦課(1~4%。車の形状による。SUVなどは4%)
③税務インセンティブも全体的に縮小へ
④全国統一GSTの方針は示されず

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インドは確かに世界からの注目は浴びている。
ただ、AECが発足し、ライバルはすぐ横にいるのである。
統一感のない州が同居している国なので、インドよりもAECの方が今までにない何か熱い一体感を感じ、
ビジネスが行いやすいのでは、と思ってしまうくらいだ。
インドは整っていないインフラ(道路・鉄道・電気)、決して安くない人件費、 教育水準の低さというハンデを乗り越え、
タイやインドネシアとの比較に打ち勝ち、投資を誘致しなければならないのだ。
 
中国の外商投資産業指導目録の歴史を分析し(この際、マネでもいいのではないか)、
政府の支出がなくとも発展を可能とした中国のケースを良く学んだ方が良いと思う。
 
途上国の製造業の発展の為には
 海外からの技術・経営方法の導入
⇒インフラの整備(工業地区の建設など)
⇒物的資本が充実する(信用が供与される)
というのが勝利の方程式として既に確立されているのだから。
まずは海外の投資を呼び込まないことには、製造業は発展し得ない。
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リーマンショック前、「BRICs」というカテゴリーで持ち上げられ、
中国と同速で伸びるだろうと言わたインドだが、政治混乱やインフラ整備の遅れで大きく後退。
その後、モディ首相に代わった時から高揚感に満ちていたが、
昨年末のビハール州選挙での惨敗から勢いが薄れ始め、今回の予算案は更に冷や水をかけることになった。
 
高度人材の層がインドに本当に厚ければ、国としての成長余地は大きいだろうが、
政府が手を差し伸べて食べさせていく人口が多過ぎると、優秀な人材は流出する。
今回の予算案はその傾向を暗示しているのでは、とは言い過ぎだろうか。